2025/04/22
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「まずは一度、試してみては」 現場目線で語る、オフショア開発のすすめ オフショア開発を成功させるためのコミュニケーション(前編)

クライアントが抱える課題
- エンジニア採用が困難になっており、特にスキルの高い人材の確保が難しい
- 自社リソースだけでは対応しきれなかった
当社の課題に対する対応
- 密な連携体制を構築
- 開発における全体像を共有
当社の取り組み後の成果
- 安定して任せられる高い品質の開発ができるようになった
アレクシードベトナムの親会社である(株)アレクシードは、長年にわたりソフトウェア開発に取り組んできました。
アレクシードベトナムとは、グループ企業としてのつながりを持ちながら、開発を発注するクライアントとしての立場でも深く関わっています。
同社は2006年ごろからベトナムにスタッフを常駐させて、現地の会社に開発を委託するオフショア開発を行っていましたが、2009年に100%子会社のアレクシードベトナムを設立し、開発を委託するに至りました。
今回は、そうした発注側とパートナーの両面を持つ立場だからこそ語れる実態に踏み込んだお話を、同社で開発を行っている中井さんにお伺いしました。
事業内容と中井さんのお仕事について簡単にお伺いしてもいいでしょうか
当社は主にケーブルテレビ(以下、CATV)、医療、物流・製造分野の3つの業界でシステム開発を行っています。
私自身は現在、ケーブルテレビ業界向けの開発部門で部長代理を務めており、役職としては管理職にあたりますが、PMとしてお客様との上流工程に関わることも多いです。
貴社との開発においては進行管理、連携調整をはじめ、全体的な委託ボリュームの調整も私の役割です。
アレクシードベトナムとの開発は大小含めて合計で数百件にのぼると思います。
アレクシードベトナムとの開発は実際にどのような流れで開発を行っていますか?
基本的には、要件定義やエンドユーザーとのやり取りといった上流工程は当社で対応し、開発やテストは貴社に委託しています。
ただし、こちらで開発を行うケースもあれば、詳細設計やプログラム設計まで貴社にお願いすることもあります。
開発・テストを中心にしつつ、プロジェクトによっては上流寄りの工程までお願いすることもあり、柔軟に対応していただいています。
コミュニケーションは意識して取るようにしている
アレクシードベトナムとの連携はどのように取っていますか?
定期的なZoomによる会議を通じて密に連携を取っています。
頻度や内容はプロジェクトごとに異なり、案件によっては2週間に1回の定例会を設けているものから週1回の会議体を設定しているものまで柔軟に調整しています。
さらに、管理者ミーティングは毎週金曜日に行っています。
この他にも、「レビューしよう」とか「説明会や勉強会やろう」といったスポットの打ち合わせは、随時その都度開催しています。
開発業務プロセスの改善など、もう少し広い範囲でのコミュニケーションを取る会議もあります。
コミュニケーションをかなり密に取られているんですね
はい、意識してコミュニケーションを取ろうとはしています。
普段はオンラインで会議を行いますが、年に2、3回は自分も現地を訪問して貴社のPMやリーダーと議論しにいくことがあります。
逆に、貴社のスタッフが当社に来てプロセス改善のために意見交換をすることもあります。
その際はあくまで「良くしていこう」というスタンスなのでこちらも“指摘だけする”つもりはなくて、協力して改善しようと取り組んでいます。
開発を進めていく上でプロジェクト管理などはどうされているのでしょうか?
以前はRedmineを使用していましたが、現在はbacklogに切り替えています。
Backlogは利用料がスペース単位で発生して、アカウント数に制限がないので融通が効くので採用しています。
日々の細かなチャット、連絡などのやり取りはSlackを使っています。
特別なツールを用意しなくていいのはスムーズですね
BacklogやSlackは視覚的にもわかりやすいし、英語にも切り替えができます。
難しい操作はほとんどないので、特に困ることはないですね。
わざわざ貴社とのやり取りに何か海外のツールを入れたり、日本語の対応していないツールを使う、というようなことはないですね。
ベトナム人エンジニアと直接やり取りされることはありますか?
Slackで直接やり取りすることはありますが、私自身がベトナム語を使うことはありません。
各プロジェクトには通訳の担当者がついていて、Slackのスペースにもその方が入ってくれています。
投稿の際にメンションをつけるだけで、その方が翻訳対応してくれる体制になっています。
ベトナムでの業務が終わった後、朝のうちに翻訳されている
意思疎通は特に問題なくできていますか?
最初の方ではうまくいかないこともありましたが、ミーティングの頻度を上げてうまく対応してきました。
通訳スキルの差も人によってあるので、そういう面で苦労したことは過去にはありますが、最近ではあまり大きく困るようなことは起きていません。
ただ、専門用語や業界固有の言葉、IT系の専門用語が多いプロジェクトでは、最初の立ち上げの時点でスムーズにいかないことはあります。でもこれは、日本人同士でも同じですよね。
プロジェクトが進めば、自然と全員の知識がアップデートされていくので、今は特に困ってはいないです。
また、翻訳チームは東京にもいて、SlackやBacklogなど、ツールベースでの翻訳対応についても、専用の体制を組んでやってくれていますので翻訳が遅くて困るということは、ほとんどありません。
チャットでもそうですし、Backlogのやり取りや設計書の共有などでも、「翻訳待ち」という状態になることがほとんどないんですよ。
すぐに翻訳されていることが多くて、「翻訳が遅いな」と感じたことは最近は全然ないです。
日本側でも時差の関係を活かしていて翻訳をスムーズに行ってもらっています。
具体的には東京にも通訳の方がいるのですが、その方は朝の早い時間から稼働してくれてるので、貴社の業務が終わった後の作業も、朝のうちに翻訳されていたりします。
実際、Backlogのコメントも、早朝にはもう翻訳されている、なんてこともあって、しっかり連携が取れていて、非常にスムーズに回っていると思います。
これは本当にすごいと思います。
ベトナムからメンバーを招いたプロジェクト
今までアレクシードベトナムと数百件開発をされていますが、特に印象に残っている案件はありますか?
相当な数の開発を行ってきたので印象に残っているプロジェクト…というと難しいところではありますが(笑)
その中でも、一つ印象に残っているものがあって。
内容としては、もともとkintone上で運用されていた業務アプリケーションを、当社が開発しているシステムにリプレイスするという内容でした。
更に当社もリソースが不足していたため、設計などの上流工程も貴社にお願いする必要があり、その際に貴社のPMやリーダーの方にも日本に来ていただいて数ヶ月一緒に設計を進めたんです。
普段はやっていない設計もお願いして、開発も一緒に進めてもらったのですが、難易度が高く工数や品質の面で問題も多くありました。
ですが、わざわざ日本に来てもらって一緒に設計して開発をしたという経験はやっぱり印象には強く残っていますね。
規模の大きさに加え、納期の厳しさ、リソース不足といった課題が重なる中で、一緒に設計から開発までやり遂げた、という意味で非常に思い出深いプロジェクトです。
メンバーを招いて開発を進めたという点からも、案件の規模感が伝わってきます。
当時の経験で、改善に活かせるようなポイントはありましたか?
そうですね、一つ大きかったのは「定例会を設けたこと」だと思います。
案件が始まる前は定例の打ち合わせすらなかったのですが、進捗状況や困っていることを定期的に共有できる場を作ることで、何かあった場合はその場ですぐに協議できるようになりました。
何も問題がなければそのままスムーズに終わりますし、何度か実施していくうちに、会議のフォーマットも徐々に定まり、双方向で情報共有しながら、できるだけスムーズに開発を進める体制を意識するようになっていきました。
また、参加メンバーについても、貴社の管理者だけでなく開発メンバーにも参加してもらうようにしたことで、「一緒に開発している」という感覚がより強まり、コミュニケーション面でも非常に効果があったと感じています。
それが先ほどお話しいただいたベトナムとの連携の会議などに繋がってくるのですね
ある程度の人数が関わるプロジェクトになると、どうしても「自分は関係ない」というような空気が出てきて、一体感が薄れてしまうことがあるんですよね。特に厳しい場面ではなおさらです。
そういうときに、定例会などで全員が顔を合わせて進捗や課題を共有することで、足並みや意識を揃えることができたので、効果を実感しました。
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