2025/10/24
Share
VB6で構築された工場の生産システムをC#および.NET Frameworkを用いた再構築
案件概要
工場の生産ラインで稼働していたWindows XPベースの旧デスクトップアプリケーションを、Windows 10環境へ移行するプロジェクトを実施しました。VB6で構築された既存システムのロジックをC#および.NET Frameworkを用いて再構築し、OSの老朽化に伴う運用リスクを排除するとともに、将来的な保守性・拡張性を確保した新システムへの移行を実現しました。
利用した技術スタック及び開発ツール
- プログラミング言語:VB6, C#
- バックエンドフレームワーク:.NET Framework
- データベース:Oracle
- コニュニケーションツール:Redmine
クライアントの課題
OSサポート終了とハードウェア老朽化による事業継続リスク
現行システムはサポートが終了したWindows XPで稼働しており、ハードウェア自体の老朽化も進んでいました。故障時に代替機を調達できないという重大なリスクを抱えており、これは工場の生産ライン停止に直結する問題でした。事業継続計画(BCP)の観点から、この状況の解消は喫緊の課題でした。そのため、サポートが継続しているWindows 10環境へのシステム移行が急務となりました。クライアントは、この移行において現行システムと全く同じ機能・パフォーマンスで安定稼働することを最重要要件とされていました。
クライアントの要望
業務プロセスを止めない:現行システムとの完全な機能的等価性を担保
新システムへの移行後も、工場の業務プロセスに一切の変更や混乱を生じさせないよう、既存の全機能や業務フローを100%再現することが求められました。特にユーザーインターフェース(UI)や操作感(UX)の変更を最小限に留めることで、現場の作業者が移行によるストレスを感じることなく、従来通りスムーズに業務を継続できることが重要視されました。
将来の拡張性を見据えた:保守性と品質を担保する厳格なコーディング規約遵守
今回の移行を単なる延命措置とせず、将来的な機能追加や改修を容易にするため、クライアントが策定した厳格なコーディング規約(Coding Conventions)への完全準拠が要求されました。命名規則、エラーハンドリング、モジュール分割、コメント規約など、多岐にわたる規約を遵守し、可読性と保守性の高い高品質なソースコードを実装することが、新システムの技術的資産価値を高める上で不可欠とされました。
当社の提案・アプローチ
独自移行ツールの開発・活用により、大規模コードの迅速かつ正確な変換を実現
移行対象のソースコードは膨大な量に上りました。すべて手作業で移行する場合、多大な工数と時間、さらにヒューマンエラーによる品質低下のリスクが懸念されました。そこで自社は、VB6からC#へのコード変換を支援する独自の社内ツールを迅速に開発・導入しました。このツールにより、定型的かつ機械的な変換プロセスを高度に自動化し、開発効率を飛躍的に向上させました。同時に、変換精度の均一化を実現することで品質を担保し、プロジェクト全体の期間短縮にも大きく貢献しました。
実機環境に依存しないソースコード解析で業務ロジックを把握し、遅延を回避
プロジェクト開始後、旧システム(Windows XP)の実機環境の提供が想定より大幅に遅延しました。通常であれば実機を操作して業務フローを把握しますが、それが不可能な状況ではプロジェクトの進行自体が停滞する恐れがありました。自社は即座にアプローチを切り替え、提供されたVB6のソースコードを徹底的にリバースエンジニアリングする手法を採用しました。コードから直接、詳細な処理ロジックや暗黙知となっている業務ルールを正確に抽出し、環境依存の遅延リスクを完全に回避しつつ、新システムへの完全な機能移植を達成しました。
移行後のリファクタリングでコード品質と保守性を抜本的に改善
オリジナルのVB6コードは、長年の改修が繰り返された結果、標準化がなされておらず、コードの可読性や一貫性が著しく低い状態でした。単にC#へ「そのまま変換」するだけでは、将来的な保守性の問題(技術的負債)がそのまま引き継がれてしまいます。自社は、C#への変換後に、コード全体のレビューと標準化(リファクタリング)プロセスを必須工程として組み込みました。自動変換後のコードを細心の注意を払って再構築し、クライアントの規約に完全に準拠させることで、新システムが技術的負債を解消し、長期的に運用・保守しやすい高品質な技術資産となるよう努めました。
Related Case Studies