2025/09/15
Share
SESとオフショアのラボ型開発を比較|自社に最適なのはどちらか?

目次
国内のエンジニア不足と人件費高騰への解決策として、「SES(システムエンジニアリングサービス)」とオフショアでの「ラボ型開発」が注目されています。
本コラムでは両者の契約形態・体制・コスト・コミュニケーション・ナレッジ蓄積の観点から違いを整理し、どのケースでどちらが適するかを具体的に解説します。
法的観点(準委任・偽装請負の注意点)や、人月単価の目安、BrSE(ブリッジSE)の役割にも触れながら、意思決定に役立つ情報を提示します。
国内SESとオフショア ラボ型開発の位置づけ
日本のIT業界では、エンジニア不足と人件費の高騰が構造的な課題になっています。
その解決策として、
①国内の外部リソースを活用する「SES (システムエンジニアリングサービス)」
②海外拠点を活用するオフショア開発での「ラボ型開発」
の2つが広く検討されています。
オフショア開発についてはこちら
両者はいずれも“外部リソースの活用”ですが、開発体制・運用など異なる点も多いです。
自社の抱える開発に対してSESを使うのか、ラボ型開発を活用するのか、このコラムでは各々の違いについてメリットデメリットを整理した上で、
それぞれがどういったケースに向いているのかを提示していきます。
SESとラボ型開発の基本理解
SESとラボ型開発の比較に入る前に、まずはそれぞれの基本的な情報をまとめます。
SES(システムエンジニアリングサービス)とは?
SES事業者からエンジニアを派遣してもらい、時間単位でエンジニアリング技術を提供する仕組みです。
エンジニアは基本的に発注先の企業に常駐し、発注先の企業で開発を行います。
SESエンジニア、およびベンダー企業は成果物に対する品質責任は持たず、あくまでベンダー企業からの「労務提供」が行われるという、準委任契約で、報酬は時間×単価が基本となります。
成果物の完成義務は原則なく、業務遂行そのものに対して対価が支払われます。また、発注企業からエンジニア個人への直接の指揮命令は想定されません。
発注企業がSESエンジニアに直接指示をすると「偽装請負」と判断され、行政からの指導対象に入るケースがあるため注意が必要です。
ラボ型開発とは?
ラボ型開発とはオフショア開発における契約形態の一つで、一定期間・一定人数のその開発案件の専属チームを確保して開発を進める契約です。
中長期の機能拡張に向き、チームとしてナレッジを蓄積しやすいのが特徴です。
ベンダー企業によるチームでは開発を行うエンジニアだけではなく、コミュニケーションをサポートするブリッジエンジニアが配置されており、クライアントとのコミュニケーションをサポートします。
請負開発について
オフショア開発においてラボ型開発と対になる言葉として「請負型開発」があります。
請負型開発は成果物単位で契約し、定められた要件と納期内に成果物を納品することに重点を置く契約形態です。それぞれ仕様や要件次第でどちらで開発を進めるのか分かれます。
・仕様がしっかり決まっている場合は請負型開発
・仕様は細かいところまで決まっておらず、開発していきながら進めていきたい場合はラボ型開発
SESとラボ型開発の共通点
SESの開発とラボ型の開発は共通点が多いため、比較されることが多いです。ここで双方の共通点についてまとめます。
契約形態
SESもラボ型開発も準委任契約という契約形態である、という点では同じで、成果物の完成ではなく、エンジニアの業務遂行に対して報酬が支払われます。
ベンダーはエンジニアを提供して稼働させれば契約が果たされることになります。
コストの算出方法
契約が労務提供のため、コストの計算は時間×エンジニア単価で計算します。
コストの見通しが立てやすい一方で、運用次第でコストが膨らむリスクもあります。
柔軟な人員変更
工数ベースでコストを算出するために、人員の調整がしやすいというメリットがあります。ただし調整のリードタイムは両者で異なります。(後述)
発注側でのプロジェクト管理
準委任契約のため、要件定義や優先度の割り振り・受け入れ条件の明確化など発注側でプロジェクトを管理する事で成果が左右されることがあります。
SESとラボ型開発の違い
SESとラボ型開発の共通点について述べてきましたが、ここからはそれぞれの違いについてまとめていきます。
場所とメンバー構成
SES:
日本国内で開発を行う。発注先企業に常駐してエンジニアが開発をおこなうことが多い。
SES企業からPMのアサインをされることもあるが、PMが所属する企業のエンジニアの要員管理やタスク管理、品質のチェックが主になりプロジェクト自体のマネジメントは範囲外。
ラボ型開発:
ベトナム・インドなど海外拠点のチームが開発を担当。
開発企業との間に日本人PMやブリッジSE、ITコミュニケーターと言われるシステム開発専門の通訳者がおり、彼らを通してエンジニアとやり取りをすることが多く、日本語だけでコミュニケーションをすることが可能。
体制と契約期間
SES:
最小1名から委託可能で短期(1〜3か月)からの契約がしやすく、スポット需要に強い。
ラボ型開発:
最低でも2〜3名以上からの委託になり、最短でも6か月以上の契約が目安。
継続的な改修や長期開発と相性が良い。
コスト
SES:
職種やスキル、場所で幅があるが最低でも60万円〜の水準が標準。
ラボ型開発:
国によって異なるが、例えばベトナムでは30万円〜から。
ベンダーや要件で変動はするものの、一般的にSESと比較するとコストは1/3から半分ぐらいになることが多い。
品質はどうか?
コストが安いと聞くとどうしても品質が気になるポイントにはなりますが
国や企業により差はあるものの、国内水準と遜色のない品質を実現できます。
様々な理由がありますが、一例として挙げるにはインド・ベトナムなどでは国家政策としてIT教育に力を入れており、優秀なエンジニアが多いという点があります。
エンジニアになるためには大学からエンジニアとしての教育を受け、大学を卒業しなければなりません。そういった環境のため、自ずと知識のある優秀なエンジニアが多い地盤が作られているのです
人員調整の自由度
どちらも人員の調整が可能であるという点は同じものの、リードタイムの自由度で言うとかなり異なります。
SES:
来週から1名、といった即応に強い。
ラボ型開発:
中長期のスケール調整に強い。
翌週などの即応は難しいが、継続前提での増減や役割のスライドなど中長期の開発において融通が効きやすい。
コミュニケーション
SES:
同一言語、同一拠点での開発が強く意思疎通や状況共有が比較的容易にできる。
ラボ型開発:
日本語とベトナム語を扱えるブリッジSEや日本人PMが間に入りエンジニアとコミュニケーションを行う。
※発注先企業は日本語でのコミュニケーションが可能。
ナレッジの蓄積
SES:
個人単位でのプロジェクト参画が故に属人化する結果、ナレッジが蓄積されなくなる。
ラボ型開発:
チームで継続していくため、プロダクトに対しての知見が蓄積しやすく、継続期間が長ければ長いほど生産性とスピードが向上していく。
SESとラボ型開発の思想の違い
上記の違いをまとめると下記のように言えるでしょう。
SESは短期・スポットで国内のリソースを補充して開発する。
ラボ型開発は中長期的な開発で海外に専属のチームを構築する。
それぞれの得意なケース
では上記の違いを踏まえて、それぞれどういった開発案件に適しているのかを見ていきましょう。
SESが向いているケース
SESの強みは即応性と局所的なサポートがしやすいという点になります。
繁忙期やある工程に限定して人員を補強して進めていきたい場合には最適です。
具体例:
① 障害対応や繁忙期のスポット増員(1〜3か月)
② 特定工程の短期的な人員補強
など
ラボ型開発が向いているケース
ラボ型開発は専属のチームが関わっていくため、継続性があればあるほど生産性や知識が蓄積されていく、というメリットを活かすケースと相性が良いです。
自社サービスを長期的に育てていく場合や、システム完成後も改修・継続開発を含む保守がある場合はラボ型開発が向いています。
具体例:
①プロダクトを中長期的に開発・育てていきたいケース
②国内採用が難しいが、安定的にチームを確保していきたいケース
など
まとめ | スポットとしてのSESと中長期の開発を見据えるラボ型開発
この記事ではそれぞれの特徴を説明しながら向いているケースについて説明しました。
両者は『工数提供』という点で似ていますが、時間軸と体制形成の思想が異なります。
短期の穴埋めにはSESが俊敏、プロダクト成長・ナレッジ蓄積・総コスト最適化にはラボ型がフィットしやすいと言えます。
自社の開発フェーズに応じて両者を使い分けることが、システム開発、ひいては事業の成長につながります。
ーーーー
弊社は約20年のベトナム オフショア開発経験を持つ日系のITソリューションのリーディングカンパニーとして、ソフトウェア開発・システム開発を提供してきています。
オフショア開発をご検討の際は是非ご相談ください。
https://allexceed.com.vn/offshore-software-development/
ーーーー
Related column
関連記事
OFFSHORE
アレクシードベトナムの
オフショア開発サービス
約20年のベトナム オフショア開発経験を持つ日系のITソリューションのリーディングカンパニーとして、ソフトウェア開発・システム開発を提供しています。
従来のオフショア開発を進化させた「オフショア開発2.0」により、我々は高品質なオフショア開発を実現します。