2025/10/01

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「もはや"オフショア"という言葉自体、必要ないんじゃないか」 アレクシードベトナムと創る開発体制 (前編)

今回はアレクシードベトナムとのオフショア開発プロジェクトに多数携わった経験を持つSさんに、これまでの取り組み、信頼関係の築き方、そして今後への期待についてお話を伺いました。

ーまずは御社の概要と、Sさんについて教えていただけますか

弊社はシステム開発・デジタル戦略を担う企業で、グループ各社の情報ソリューション・セキュリティ・教育・医療など多分野に渡りデジタル展開を進めています。
私はWebシステム、スマートフォンアプリ等の開発やレガシーシステムのマイグレーション案件のマネジメントを担当していました。

開発はグループ全体の業務に関わる重要な領域ですので、私たち現地側でも品質やスピード、コミュニケーションを重視しながら日々プロジェクトを進めています。

日本語での確実な意思疎通が選定の決め手

オフショア開発を始めた背景を教えてください。

もともと弊社には数百名のエンジニアが在籍しており、自社内で完結する開発体制があったため社内ですべて対応するのが基本でした。

ただ、2010年代頃からコスト削減を目的にオフショア開発を始めていました。
当時は日本とベトナムの価格差がかなり大きかった時代でもありますので、それがきっかけになりました。

実際にベトナムと中国の2カ国で比較検討をし、現在ではベトナムと中国でオフショア開発を行っています。

 

そこからアレクシードベトナムに依頼するきっかけは?

実は御社に委託する前からベトナムローカルのシステム開発企業とオフショア開発を行っていました。
しかし開発を行っている中でいくつか課題を感じており、他の開発会社ではどうやってオフショア開発をやっているのか?」という点に興味を持ちました。

またベトナムの企業と日系企業のオフショアを比較したいという思いもあり御社を一つの候補としてお願いするに至ったという経緯です。

 

数あるオフショア開発企業の中でアレクシードベトナムを選んだ決め手は?

元々、日系のシステム開発企業をいくつか探していたのですが、御社が日本語のコミュニケーションがうまく取れる会社だったため、というのが一番大きな理由です。
日本人責任者が積極的に案件のサポートに入ってくれていたという安心感がありました。

さらに、御社のITコミュニケーターの対応も良く、きちんとコミュニケーションをとることができた、と言う点が大きかったです。
これは仕方がないことですが、オフショア開発だとこちらの意図していることが伝わっておらず話が噛み合わないことが多々あるんですよね。
しかし、御社のITコミュニケーターは伝えた内容をその都度確認してくれるため、伝わっていないといった状況は少ないです。

とはいえ最初の時期は、伝えたいことが報告なのか相談なのかわからず、困ったことが多かった時期もありましたが、現在は相当改善されています。
「一度翻訳をしたいので話を切らせてください」とはっきり伝えてくれる点も、こちらとしても全般的に仕事をしやすいなと感じています。

 

いろいろな観点で検討されたかと思いますが、一番の決め手は安心感でしたか?

そうですね。もちろん、クオリティやコストの面も重要ではありますが、最初はやはりその安心感があって、しっかりと日本語で意思疎通ができたからだと思っています。

実際の開発体制

アレクシードベトナムとの実際の開発体制について教えてください

我々も内製化できる部分が多くあります。そのため、自社で対応する案件と、御社に外注する案件は、ある程度明確に分けて管理しています。

たとえば「ある程度の人数が必要な案件」や「開発規模がまとまっている案件」、あとは「マイグレーション系の案件」などは外部にお願いする傾向があります。

逆に納期が短い案件や仕様が複雑な案件は、社内で対応するケースが多いです。どうしても人数がガッと必要になるような案件は、内部で人が集められないケースが多いので、外部である御社に依頼することが多いです。

具体的な役割として基本的に上流工程(要件定義や概要設計)を弊社で担い、詳細設計含めた開発工程以降を御社にお願いするという役割分担で進めています。
もちろん案件によっては、技術的知見を元に設計レベルでフィードバックをもらうこともあります。

 

実際に印象に残っているプロジェクトなどはありますか?

一番印象に残っているのは、社内サーバーのEOLに伴うマイグレーションプロジェクトです。

我々が運用していたサーバーを新サーバーに移行するプロジェクトだったのですが、200件以上にのぼるPHPシステムを対象に、サーバー刷新とPHPのバージョンアップを一括で行うという、非常にチャレンジングなプロジェクトでした。
最終的には2年半という長期プロジェクトで、延べ300人月規模という大きな案件になりました。

内容としては「全社の土台を一気に塗り替えるような」重たい仕事で、御社には技術的検証、実装、そして移行・検証作業まで、幅広く担当していただきました。

こういう大きなプロジェクトは、ちょっとした認識のズレが大きなミスにつながるんですが、そこをしっかり吸収していただけた点が非常に印象的でした。
このような大きな案件は自社だけではリソースを調達するのが非常に難しく、御社の力は必要不可欠でした。

定期的なレポートで生産性を可視化

開発をされてきた中で、やりやすいと感じたことはありましたか?

私が個人的に「やりやすかった」と感じた点は大きく3点あります。
まず1点目には定期的なレポーティングをいただける点です。

とくに「生産性レポート」が非常に良いと感じており、単なる作業報告ではなく、前月比や目標値に対する達成度が明確に可視化されていました。
状況を定量的に把握しながら改善点を議論できる環境を整っていた点は普通のレポートとは違うなと感じています。

数字があることで説得力もあり、開発現場としても「もっとこうしよう」というモチベーションに繋がりやすかったと思います。単に作って終わりではなく、どうすればより良くなるかという視点で、生産性向上を一緒に追いかけてくれていたのがとても助かりました。

通訳を超えるITコミュニケーターの伴走

2点目はITコミュニケーターとのコミュニケーションの取りやすさだと思っています。

オフショア開発において通訳のサポートというのは非常に大きな役割を持つのですが、単なる通訳にとどまらず、議論の背景や意図を汲んだ上で、会話を整理しながら進めてくれるファシリテーター的な存在となりプロジェクト全体の進行を円滑にする大きな要因になっています。

オフショア開発だと顕著なのですが、会議が長くなってしまいがちなんです。けどそこをスムーズに進行させてくれて、必要なポイントをしっかり押さえる。
そういった意識を持って進めてくれていたと感じています。逆に、コミュニケーションがうまく取れないと開発自体が難しく「もう社内で開発した方がいいや」となってしまうんですよね。

オフショアの使いやすさはコミュニケーションの良し悪しでかなり変わると思います。

「どうすれば最適な形で実現できるか」を一緒に考えてくれる協働的な姿勢

3点目は急な要望変更や厳しいスケジュールにも柔軟に対応していただける点ですね。

過去には予期せぬ事情で納期が短縮されるケースもあったのですが、すぐに「対応できません」と断るのではなく、どのような調整が可能かを検討していただき、最終的には品質を保ちながら納期を守っていただくことができました。

特に期末で複数案件が重なった時期においても、リソース調整やスケジューリングを工夫してくださり、非常に頼りになったという経験があります。

単に「できる・できない」で判断するのではなく、「どうすれば最適な形で実現できるか」を一緒に考えてくれる協働的な姿勢が、長期的な信頼関係につながっていると感じています。そこまで考えていただける企業はなかなか多くはないと感じます。

 

会議の話がでてきましたが、開発現場においてどのようにコミュニケーションをとっていましたか?

コミュニケーションでいうと定期的に会議をしています。
会議帯としては週1回のマネージャミーティング、管理層のミーティングを行っている他に何か問題があった時は緊急のミーティングを設定していただき、両者のマネージャを含めて参加してもらっていました。

コミュニケーションにおいて問題がなかったわけではないですが、問題が起きた時にしっかり対応できる体制がありました。ですので、トラブルが起きてもその都度しっかり連携ができており「ミスが頻発している」といった印象は感じませんでした。

文化的な違いって、単なる言語の問題ではないんですよね。「曖昧な表現のまま進んでしまう」「空気を読んでくれると思ってしまう」といった、日本人同士なら許されるやり方が、海外との開発では通じない。でも御社は、そこをよく理解されていると感じます。

ちなみに、MTG以外にも日々の細かいチャットにはコミュニケーションツールとしてTeamsを使用しています。

 

開発する上で課題・改善点などはありましたか?

トライアルしながら進めていたので、やり方が決まっていない点が当初の課題でした。

あるプロジェクトでは作業量に大きな波があり、それに応じてリソースの調整が必要だったのですが、プロジェクト全体でうまく対応しきれなかった部分がありました。しかし、我々からやりたいことをお伝えして、課題の解決策、改善点を提案いただきながら進められたことで、徐々に最適な開発体制が構築されていきました。

とはいえ、リソース面でも大きな成長・改善が見られたことも事実です。
プロジェクト当初は、御社の開発チームも我々のプロダクトや業務に慣れておらず、多少時間がかかる部分もありましたが、継続して取り組む中でスピードは着実に上がっていきました。

また、初期段階ではややバラつきがあった見積もりの精度についても、プロジェクトを重ねるごとにどんどん精度が高まり、最終的にはかなり正確に工数を予測できるようになったと感じています。

こうした改善の積み重ねによって、
生産性が上がった
作業の見積もりの精度が上がった

という2軸でオフショア開発の質そのものが大きく向上してきたと実感しています。

それ以外に大きな不満や、フィーリング的な違和感みたいなものは、特に感じていません。

後編に続く>>>