2026/04/20
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【オフショア開発企業が語る】ベトナム人エンジニアの実力と特徴 ー 日本人エンジニアと異なる強み・弱み
目次
はじめに
「ベトナム人エンジニアって、実際どうなんですか?」
オフショア開発を検討する企業のPMや経営者から、もっともよく聞かれる質問のひとつです。「安くて勤勉」というイメージはあるものの、実際に委託できるレベルなのか、品質や意思疎通に不安を感じている方は多いです。
本記事は、ホーチミンで15年以上オフショア開発を運営し、100名超のベトナム人エンジニアと日々仕事をしてきた私たちアレクシードベトナムが、現場の実体験から書いた記事です。「日本在住のベトナム人エンジニア」ではなく、「ベトナム現地で働くエンジニアをオフショア開発として活用する」という文脈での強み・弱みをお伝えします。採用・発注先の選定に役立てていただければ幸いです。
ベトナムIT人材の全体像
まず数字でベトナムのIT人材の現状を把握しておきましょう。
ベトナムのIT業界には現在約53万人のエンジニアが就業しており、毎年約57,000人の新卒エンジニアが社会に輩出されています。
(出典:VTI「Human Resources of Vietnam IT Industry in 2023」)
スキルレベルの分布(TopDev 2022年調査)を見ると、フレッシャー(新人)12%・ジュニア29%・ミドル34%・シニア18%・リーダー以上7%となっており、ミドルクラスが最大層を形成しています。
(出典:TopDev「Vietnam IT Market Report 2022」)
「新人ばかり」というイメージを持たれることがありますが、実態はミドル以上が5割超を占めており、即戦力となるエンジニアも十分確保できる環境です。
当社のエンジニアの平均年齢は29歳と若く、ベトナムのIT業界全体でも若手世代が中心です。スピード感と柔軟性はプラスに働きますが、経験値が問われる上流工程には配慮が必要です(この点は後述します)。
ベトナム人エンジニアの5つの強み
1. 数学・論理思考の基礎力が高い
ベトナムは政府主導でSTEM教育(科学・技術・工学・数学)に注力しており、2018年の学習指導要領改訂によって小学3年生から情報技術が必修科目となっています。
その成果は国際的な実績にも表れています。2017年の国際数学オリンピックでは韓国・中国に次ぐ世界3位を獲得しており、論理思考力・数学力の基礎は世界水準です。
当社で80名超のエンジニアと働いてきた経験から言えば、「なぜそのロジックにしたのか」を問うと、明確な根拠を説明できるエンジニアが多いです。根拠なくとりあえず動くコードを書く、という姿勢は少ない印象があります。アルゴリズム実装やバグ解析といった、思考力が問われる作業での粘り強さはこの基礎力に直結していると感じています。
2. 向上心と自己研鑽の意欲が高い
ベトナム人エンジニアの向上心の高さは、日々の業務の中でも実感しています。キャリアアップを目指して資格取得や最新技術のキャッチアップに積極的に取り組むエンジニアが多く、AIやクラウド(AWS・Azure)といった新領域への関心も急速に高まっています。
AIコーディングツールへの適応力は、特に注目に値します。当社でGitHub CopilotとCursorを全エンジニアに展開した際、使い方を自ら学び、社内勉強会を自発的に立ち上げるメンバーが続出しました。現在は生成AIタスクフォースチームを組成し、上級エンジニアが最新のAIツールを継続的に評価・検証しています。AIを「使いこなす」姿勢が身についているエンジニアが増えているのは、日本側のクライアントにとっても心強い変化です。
AI開発プロジェクトへの対応力も着実に育ってきています。当社では、マスク着用パターンを含む顔認証勤怠管理システムの開発実績があり、画像認識・機械学習を実務に適用できるエンジニアが在籍しています。ベトナム国内でも、ハノイ工科大学が2024年に生成AIの専門工学プログラムを開講するなど、次世代AIエンジニアの育成が本格化しており、今後さらに戦力となる人材が輩出されてくるでしょう。
3. 日本語話者が多く、コミュニケーション障壁が低い
「英語でやり取りできますか?」と聞かれることがありますが、正直なところ、私たちの現場で英語コミュニケーションが得意という印象はあまりありません。
日本向けオフショア開発の市場が成熟しているベトナムでは、日本語を話せるエンジニアも一定数います。ただし全員が流暢というわけではなく、SlackやMeetで直接やり取りできるレベルのエンジニアは限られています。
そこで重要になるのが、日本語・ITの両方に精通したITコミュニケーター(通訳専門スタッフ)の存在です。当社では9名のITコミュニケーターが在籍しており、技術的な内容も含めて日本語で正確に橋渡しする体制を整えています。エンジニア自身の語学力だけに依存しない仕組みがあることで、コミュニケーション起因のトラブルを大幅に減らすことができます。日本の文化や仕事の進め方を尊重しようとする姿勢を持つエンジニアも多く、「きちんとやってくれる」という信頼感につながっています。
英語については、技術ドキュメントの読解力という点で優位性があります。EF EPIスコアではベトナム(498)が日本(454)を上回っており、グローバルな技術情報やOSSドキュメントへのアクセスが容易なため、新しいフレームワークや技術の習得スピードが速い傾向があります。
(出典:EF EPI 2024)
4. コーディングのスピードと精度が高い
業務ロジックの実装、詳細設計に沿ったコーディング、テストについては、ベトナム人エンジニアの能力は高い水準にあります。当社のエンジニアはJavaScript(React/Node.js)、Java、.NET(C#/VB.NET)、PHPといった主要技術スタックをカバーしており、1名で複数の技術領域を担えるメンバーも少なくありません。
当社の案件では、Java 1.4.2からJava 21(Spring Boot)への大規模マイグレーションを31人月で完遂した実績があります。自社開発の自動化ツールとテストプロセスの最適化を組み合わせ、業務ロジックを漏れなく再現しながら納期内に収めました。
また、テストを開発と分業せず、エンジニア自身が単体テスト・結合テストまで担う体制を取っているため、品質の確認プロセスがスムーズです。「実装したら終わり」ではなく、動くものを届けるところまで責任を持つ姿勢は、日本のクライアントからの評価が高い点の一つです。
5. オフショア活用でコスト優位性を発揮できる
ここで一点、重要な前提をお伝えします。この強みは、ベトナム現地で働くエンジニアをオフショア開発として活用する場合の話です。日本国内で就労するベトナム人エンジニアは日本市場の給与水準で採用されるため、コスト優位性は発揮されません。
ベトナム現地エンジニアの月額給与は経験年数によって異なりますが、Juniorクラス(経験1〜2年)で月額$600〜750程度、Mid-levelクラス(経験3〜4年)で月額$1,000〜1,100程度が目安です。
(出典:ITviec「Vietnam IT Salary Report 2023-2024」)
発注単価として見ると、当社の実績ベースで首都圏企業と比較して50〜70%のコスト削減が可能です。
人材不足・採用コスト高騰に悩む企業にとって、スキルと費用のバランスが取れたオフショア活用は、現実的かつ即効性のある選択肢です。ラボ型(専属チーム)・請負型の両方に対応できるベンダーを選べば、案件の性質に合わせた柔軟な体制構築も可能です。
見過ごせない弱みと対処法
強みの一方で、委託の範囲と体制を考える上で正直にお伝えしておきたい弱みもあります。
弱み1:上流工程の経験が限られる
要件定義・基本設計といった上流工程になると、途端に苦手意識を感じるエンジニアが増えます。「言われたものを正確に作る」スキルは高い一方で、「何を作るべきかを提案する」「仕様の曖昧さを能動的に解消する」ことへの慣れが少ない傾向があります。
これはベトナム人エンジニアの能力の問題というより、オフショア開発の構造上、下流工程を担当するケースが多かったことによる経験の問題と捉えるべきです。上流工程は日本側のPMやプロダクトオーナーが担い、詳細設計以降をベトナム側に委ねる分担が、現時点では最も安定して成果を出せる体制です。
弱み2:日本語ドキュメントの作成が難しい
日本語でコミュニケーションが取れるエンジニアであっても、ビジネス文書・仕様書・議事録といった日本語ドキュメントの作成は別のスキルが必要です。技術的な会話はできても、日本語の書き言葉で正確かつ適切な文書を書くことの難易度は高く、そのままアウトプットを使えるレベルには達していないケースが多いです。
当社では日本語・IT両方に精通したITコミュニケータ(通訳専門スタッフ)が9名在籍しており、ドキュメントの確認・修正を支援する体制を構築しています。ベンダー選定の際は、こうした言語サポート体制が整っているかを確認することを強くお勧めします。
弱み3:曖昧な仕様への対応
日本のSIerでよく行われる「なんとなく動くものを作りながら要件を固める」というアプローチは、ベトナム人エンジニアにとって難易度が高いです。仕様が明確なほど高いパフォーマンスを発揮し、仕様の抜け穴や矛盾があると立ち止まってしまう傾向があります。
裏を返せば、「仕様書を丁寧に作れば高品質なものが返ってくる」ということでもあります。発注前の要件整理に時間をかけることが、品質と工数管理の両面でプラスに働きます。
委託先エンジニアの見極め方
オフショア委託を検討する際、ベンダーから提案されたエンジニアが本当に任せられるレベルかどうかを判断するために、以下の5点を確認することをお勧めします。
1. コーディングテストで基礎力を確認する
実務に近いシナリオを用いたコード実装テストが有効です。「動くコードが書けるか」だけでなく、「なぜそのアプローチを選んだか」を口頭で説明させることで、論理思考の深さも把握できます。ベンダーに依頼してテストの場を設けてもらえるかどうかも、ベンダーの姿勢を見る一つの指標になります。
2. 過去の担当フェーズを確認する
要件定義・設計まで経験しているか、実装・テストが中心かを確認します。上流工程を任せたい場合は経験者をアサインしてもらうか、日本側でしっかり補完する前提で計画を立てます。経歴書に「開発」と書いてあっても実態は「実装のみ」というケースが多いため、具体的なプロジェクト内での役割を詳しく確認することが重要です。
3. 仕様の不明点を能動的に確認できるかを見る
「仕様に不明点があったときどうしますか?」「矛盾に気づいた場合どう対応しますか?」といった質問を面談で投げかけてみてください。曖昧なまま作り進めてしまうタイプか、積極的に確認するタイプかを事前に把握できます。オフショアでのトラブルの多くは「確認せずに進めた」ことが原因のため、この習慣の有無は重要な評価軸です。
4. 技術的な説明力を試す
自分のコードや設計判断を論理的に説明できるかを問うことで、思考力と伝達力を同時に評価できます。「このコードを日本側のPMに説明するとしたら?」という問いかけは、ITコミュニケーターを介した実際の業務に近い状況を想定した評価として有効です。
5. ベンダーのPM体制・コミュニケーション窓口を確認する
エンジニア個人の質だけでなく、ベンダー全体の管理体制もセットで評価することが重要です。PM・ITコミュニケーター(通訳専門スタッフ)が在籍しているか、週次・月次報告の仕組みが整っているかを確認してください。エンジニアがいくら優秀でも、管理体制が脆弱なままでは品質と納期の安定は期待できません。問い合わせへのレスポンス速度と品質も、ベンダーの信頼性を見る重要な指標です。
まとめ
ベトナム人エンジニアの実力を一言でまとめると、「数学・論理思考を基盤とした高いコーディング力と向上心を持つ実装のプロフェッショナル」です。一方で上流工程や日本語ドキュメントは弱点になりやすく、その部分を日本側がどう補完するかが、プロジェクト成功の分岐点となります。
オフショア開発において「何でも任せられる万能エンジニア」を期待すると期待外れになります。しかし「詳細設計以降の実装を任せる」「品質の高いコーディングパートナーとして長期的に育てる」という視点で活用すれば、国内エンジニアと遜色ない、あるいはそれ以上の成果を出すポテンシャルを持っています。
ベンダー選定の際は、エンジニアのスキルだけでなく、PM体制・ITコミュニケータの有無・上流工程の協業モデルまで含めて評価することをお勧めします。
プロジェクトにあった方法をご提案させていただきます
弊社は約20年のベトナム オフショア開発経験を持つ日系のITソリューションのリーディングカンパニーとして、ソフトウェア開発・システム開発を提供してきています。
オフショア開発をご検討の際は是非ご相談ください。
著者
淀木 謙佑
2016年ゲームメディアを運営するベンチャー企業に入社し、コンテンツ制作やSEO対策を通じてwebサイト運営の実務を3年間経験。
その後、Eコマース事業に特化したコンサルティング企業でECサイト構築のディレクションからマーケティングまで、幅広い業務を手掛ける。
2020年にはベトナムに拠点を移し、製造系メーカーの社内ウェブ部門をゼロから立ち上げるプロジェクトをリード。2024年からALLEXCEED VIETNAMに参画し、デジタルマーケティングでの知見を活かしながらコンサルタントとしてオフショア開発の最前線で経験を積み続けている。
監修者
スティーブン・ウー
マレーシア生まれのマレーシア人。多言語を操るマルチリンガル。
2015年にITスタートアップに入社しビジネス面において幅広く従事。その後ベトナムに移住し、オフショア開発企業でPMO/PM/PdMとして50案件以上を担当。
2019年7月にソフトウェア開発を提供するLLL ASIAを創業、CEOに就任し、100以上にも渡るソフトウェア及びWebアプリケーションの開発を支援。
2024年からALLEXCEED VIETNAMに入社し、VPに就任。新規案件の営業フロントやコンサルを担当し、営業マーケ組織を管掌。
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